“いか徳利”が有名な岩手県山田町の木村商店はどんな会社?

いか徳利が有名な岩手県山田町の木村商店はどんな会社?

「いか」で徳利を作るという奇想天外な発想で作られた日本の伝統的な水産加工品「いか徳利」。

日本酒とスルメの相性のよいもの同士を掛け合わせて、いいとこ取りを狙った先人の知恵や遊び心に感服してしまいます。

お酒好きなら一度は楽しみたい「いか徳利」の熱燗は、うっすらとした琥珀色で、イカ独特の旨みも溶け出して日本酒が深みのある味わいに変化します。

岩手県山田町の木村商店では地元の名産品「いか徳利」を主力商品として製造・販売し、「いか徳利造り体験」も行い、地元「山田」の観光を盛り上げています。

木村商店は3代目の「木村 トシ」さんが社長をつとめ、化学調味料や保存料などの添加物を使わず、「地元に代々伝わる、あったかくて、懐かしいおふくろの味」にこだわった商品作りをしています。

社長のトシさんはアイディアマンでもあり、消費者のニーズを捉えて商品開発に落とし込み、生み出された商品は数々の賞を受賞しています。

震災では、店舗と加工場を失った社長のトシさんですが、トシさんが先頭に立ち同じように被災した地元の水産加工業者5社にはたらきかけ、合同会社「株式会社 五篤丸水産」を設立しました。

同じ水産加工業でも取扱商品が異なる5社ですが、五篤丸水産の店舗やECサイトで一括して幅広い商品のラインナップを展開できることが強みになっています。

木村商店を含めた5社が運営する五篤丸水産は、地元「山田」をブランド化し、水産加工品としての付加価値を高め、地域活性化の起爆剤となることが期待されています。

この記事では、下記の項目について詳しく紹介します。

  • 「いか徳利」の特徴について
  • 岩手県山田町の木村商店について
  • 木村商店の三代目名物社長「木村トシ」さんについて
  • 木村商店の震災からの復活ストーリー
目次

いか徳利とは

いか徳利とは

いか徳利(いかとっくり)は、イカの胴体部分を徳利のような形状に乾燥し仕上げて、実際にお酒を入れて熱燗を楽しめる伝統的な日本の水産加工品です。

「いか徳利」は岩手県山田町をはじめとした、イカ漁が盛んな三陸、北海道、京都府、佐賀県などの地域で特産品として販売されています。

スルメと同じ原料のイカを徳利の形状に仕立てた「いか徳利」は、日本酒にしみ出る旨みや熱燗から立ち上るイカ独特の香りを存分に楽しめます。

いか徳利の楽しみ方

いか徳利の楽しみ方

「いか徳利」は温すぎず、熱すぎず、50℃程度の熱燗で味わうのがベスト。

1杯の「いか徳利」で2~3回の熱燗が楽しめます。

日本酒好きの方にとって、直火で炙ったスルメの芳ばしい香りと噛めば噛むほどにじみ出てくる旨みは最高のつまみになります。

ちょっとリッチに吟醸酒の熱燗を楽しんだあとの「イカ徳利」を直火で炙れば、イカの芳ばしい香りに吟醸酒のフルーティーな香りがプラスされ、スルメのあぶりにはない「イカ徳利」ならではの香りが楽しめます。

また、「イカ徳利」に染みこんだ吟醸酒から適度に水分が飛んで、イカ独特の旨みとともに吟醸酒の上品な味わいがいっそう濃く感じられます。

日本酒と相性のよいイカの干物を徳利として利用しようとする発想は独創的で、先人の遊び心も感じられ、おもしろいですよね。

「いか徳利」は栄養満点?

「いか徳利」は独特の形状や風味もさることながら、栄養面でも優れています。

栄養成分的にはスルメと同等と考えてよいでしょう。

「いか徳利」のカロリーは100gあたり304kcalです。

アミノ酸スコアが高い良質のタンパク質が重量の70%近くを占めていますが、一方で脂肪分は4.3%と少なめです。食品番号: 10353 食品群名/食品名: 魚介類/<いか・たこ類>/(いか類)/加工品/するめ|文部科学省:)

コレステロールは他の魚介類に比べて多めに含まれていますが、コレステロールを低下させ、肝臓を元気にする効果があるとされる「タウリン」を豊富に含んでいます。

「いか徳利」は、アルコールにより肝臓に負担がかかる日本酒との相性バッチリですね。

塩分やプリン体も含まれているので、1日あたり10~30gを目安にして、食べ過ぎには注意しましょう。

また「いか徳利」は、咀嚼による脳の活性化や肥満防止、唾液分泌の促進による虫歯や歯周病の予防なども期待できるそうです。

岩手県山田町の木村商店について!

岩手県山田町の木村商店について!

岩手県山田町にある創業明治41年の「有限会社 木村商店」は、木村トシさんが三代目の社長をつとめ、水産物の加工や販売を行っています。

木村商店の主力商品「いか徳利」は山田町の名物としても有名。

木村商店のある岩手県山田町中央町は、三陸海岸の中央付近にあります。

ちょうど暖流と寒流が合流する潮目にほど近いこの地域は、昔から格好の漁場として栄えてきました。

木村商店は「地元に代々伝わる、あったかくて、懐かしいおふくろの味」にこだわった商品作りをしています。

地元の漁場で獲れた新鮮な海産物をいかして、昔ながらの無添加・手作りにこだわり、商品の製造と開発、販売を行ってきました。

木村商店では「いか徳利」のほかに、「さんまの燻製オリーブオイル漬」、「揚げない帆立クリームコロッケ」「三陸松前漬け」、「さんま千枚漬け」などのオリジナルの水産加工品も販売しています。

さらに、「いか徳利」作りを体験できる「いか徳利造り体験場」も併設しています。

このように、木村商店は、特産品などの商品販売だけではなく、観光客に体験価値を提供することで観光の盛り上げに一役買っています。

住所〒028-1332 下閉伊郡山田町豊間根7-30
電話番号0193-83-5510
FAX0193-86-2810
インスタグラム木村商店
木村商店の基本情報

木村商店の三代目名物社長「木村トシ」さんについて

木村商店の三代目名物社長「木村トシ」さんについて

木村商店について語る際には三代目の名物社長「木村トシ」さんの存在がかかせません。

木村商店は「木村トシ」社長の祖父にあたる「木村安太郎」さんが創業しました。

木村家は大工の家系でしたが、漁師の「安太郎」さんが婿入りしたのを契機に水産加工業を営むようになりました。

トシさんは、小さい頃から家業の水産加工を手伝っていたそうです。

また、学校を卒業後、19年間の郵便局勤めを経て家業を継ぐようになりました。

エネルギッシュで常に行動を起こして活動している特徴から、周りからは「マグロやカツオなどの回遊魚のよう」と評されていました。

家業を継いでからも意欲的に商品開発に取り組み、次々に湧き出てくるアイディアをもとに、オリジナル商品を生み出してきました。

トシさんが開発を手がけたオリジナル商品は、コンクールの入賞や水産庁長官賞受賞など数々の高い評価を受けています。

地元と近隣地域の食材にこだわるのは「隣がよくならないと、自分のところもよくならない。隣近所を大事にしろ」という父の教えが影響しているそうです。

そのため、魚介類はもちろん地元の前浜産、お米は岩手県の遠野産、調味料も岩手県産というように、必要な食材を岩手県内の近隣地域から調達しています。

また、木村商店では「化学調味料をつかわないこと」というこだわりが代々受け継がれています。

トシさん自身が大病を患った際に、無添加の良さを身にしみて実感されたそうです。

海の幸に恵まれた環境にある木村商店ならではの「伝統の味」や「食材本来の味」に対するこだわりが垣間見えます。

震災後のトシさんの活躍について|「株式会社 五篤丸水産」の設立

震災後、トシさんが先頭に立ち、店や加工場を失った地元の水産加工業者に共同会社の設立を提案しました。

その結果、震災まで横のつながりがなかった5社が共同出資して「『五徳(ごとく)』のように山田町を支えていく」という思いを込めて「株式会社 五篤丸水産」を設立しました。

平成24年6月には実店舗とECサイトをオープンし、若手を積極的に活用してSNSでの情報発信なども行っています。

「山田の食の魅力を全国に伝えたい」という共通の思いを抱え、地元の「山田」をブランドにした商品作りを進めています。

このような、取り組みが「地域活性化のための新しい事業モデル」として「事例1-7 異業種5社による五篤丸水産の設立(岩手県山田町)」内で紹介されています。

住所028-1332
岩手県下閉伊郡山田町中央町5-2
電話番号0193-77-4312
FAX番号0193-77-4313
公開メールアドレスinfo@gotokumaru.jp
ホームページアドレスhttp://www.gotokumaru.jp
五篤丸水産の基本情報

五篤丸水産に出品中の木村商店の「いか徳利」

現在、木村商店のオフィシャルWebサイトにアクセスできない状態です。

そのため、木村商店の「いか徳利」は現在、下記の五篤丸水産のネットショップで購入できます。

木村商店の震災からの復活ストーリー

木村商店の震災からの復活

木村商店が本社を構える岩手県山田町は小さいながら自然に恵まれた環境で、ホタテや牡蠣の養殖やまつたけ栽培などが盛んな町。

しかし、最近では過疎化が進み他の沿岸部地域と同様に、若者の流出や人口減少などの問題を抱えていました。

そのような中、震災が起こり木村商店も津波の影響で、店と工場はなくなり原材料を保管する倉庫とトシさんの自宅だけが残りました。

震災から1週間で被災を免れた自宅に帰り、その約1ヶ月後には被災した隣の跡地を借りて作業場を建て、事業を再開しました。

加工場の売り上げは震災前の80%程度まで順調に回復しましたが、直売店を再開するめどは立たず、木村商店全体での売り上げとしては震災前に及びませんでした。

木村商店のヘルシーで地元の海産物を活かした商品開発力

トシさんは売上げを回復しようと全国の復興支援イベントへ出向くなかで、従来のような和食風の「甘露煮」や「煮物」などは若い人に見向きもされないことに気づきました。

そこで、若い人たちにも食べてもらえるように、洋風の商品の開発に着手しました。

「さんまの燻製オリーブオイル漬」の開発ストーリー

洋風の商品を開発するために、知り合いのフレンチシェフから3年以上の間、毎月のように洋食について学びました。

その甲斐あって、ついに洋風のオリジナル商品「さんまの燻製オリーブオイル漬」が完成し、平成27年の岩手県の水産加工品コンクールでは水産庁長官賞を受賞しています。

青魚のサンマはω-3系不飽和脂肪酸のEPAやDHAを豊富に含んでいます。

一般にEPAは「血液をサラサラにする」、DHAは「頭によい」とされており、体内で作られないため食物などから積極的に摂取するように推奨されています。

このように栄養満点のサンマですが、青魚特有の生臭さや干物などにするとパサつきが気になり、若い世代に敬遠されがちです。

「さんまの燻製オリーブオイル漬」は燻製にすることで、サンマ独特の生臭さが消えて燻製のスモーキーな香りにかわります。

また、一価不飽和脂肪酸「オレイン酸」が豊富に含まれているヘルシーなオリーブオイルにつけ込むことで、シーチキンのようにパサつきの少ない食感になります。

このように、食品の風味だけでなく栄養面にも配慮した商品開発をされています。

「揚げない帆立クリームコロッケ」の開発ストーリー

木村商店は無添加で商品を製造しており防腐剤を使わないので、従来の加熱殺菌方法では時間と手間がかかるという問題を抱えていました。

そのような中、スチームコンベクションオーブンを使うことで「簡単に加熱殺菌が可能で、さらに油で揚げずにヘルシーなコロッケなども作れる」ということを教えてもらったとのこと。

さっそく、デモ機で試作しておいしかったので導入を決定。

その結果、地元産のホタテがゴロッと贅沢に入ってヘルシーな「揚げない帆立クリームコロッケ」が誕生しました。

地元で獲れた大粒のホタテを丸ごとコロッケに入れて油を使わず仕上げ、ホタテ本来の風味や食感を存分に楽しめるヘルシーなコロッケとして、コンクールで入賞も果たしています。

「おふくろの味」を大切にしている木村商店

木村商店の商品を作っているのはほとんどが女性。

製造する商品数も多いことから、マルチタスクに優れる女性が適している職場とのこと。

「おふくろの味」をおふくろ達が製造されているということで「看板に偽りなし」でしょう。

まとめ

「いか徳利」は、イカの胴体部分を徳利状に形作り、お酒を入れて楽しめる伝統的な日本の水産加工品。

木村商店は岩手県山田町で名産品の「いか徳利」など、地元で獲れた海鮮物の水産加工品を製造・販売しており、地元の観光を盛り上げるために「いか徳利造り体験」も行っています。

木村商店は三代目の「木村 トシ」さんが社長をつとめ、「地元に代々伝わる、あったかくて、懐かしいおふくろの味」にこだわった商品作りをしています。

化学調味料や保存料などの添加物は使わず、海産物が豊富な三陸地方の地の利を活かし、昆布やカツオなど天然の素材で出汁を取っています。

また、保存料を使わなくてよいように、スチームコンベクションオーブンを導入して加熱殺菌の効率を高めるなど、設備投資や業務改善も積極的に行っています。

社長のトシさんは、地元「山田」と岩手県内の近隣地域でとれた食材を使用して商品を製造・販売しています。

震災後にはトシさんが先頭に立ち、それまでつながりがなかった被災した地元の水産加工業者5社で共同会社「株式会社 五篤丸水産」を設立しました。

それにより、五篤丸水産の実店舗とECサイトで5社の商品を一括して幅広く展開できるようになりました。

トシさんは、地元「山田」と近隣地域の食材を積極的に商品開発に取りいれたり、地元の同業者とも手を携えたりと「周りの人々や地域とWin-Winの関係を築く」ように尽力されています。

「隣がよくならないと、自分のところもよくならない。隣近所を大事にしろ」という父の教えが名物社長「木村 トシ」さんのなかに息づいているような気がしました。

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